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<週刊ビッグコミックスピリッツ 1995年1号〜39号>
● あらすじ ●

水泳の特待生として、名門・桜花高校体育科に通う赤井修二、2年生。
彼はバタフライを得意としていたが無理がたたって腰を痛めていた。
腰に爆弾を抱えながらも修二は水泳部のホープとして活躍していた。
 そんな時、新1年生が入部してくる。その中には修二が中学時代に
水泳を始めるきっかけとなった女性、若林千夏の姿があった。
 本当ならば修二と同じ2年生のはずだが、彼女は中学時代
教育実習生の男性と関係を持ち、その男性の子供を中絶していた。
 過去の絶望から立ち直り、1年遅れで入ってきた千夏に修二は戸惑う。
修二の幼なじみで彼に恋をする風子が体を張って求愛するも修二の心は
若林千夏だけを見つめていた。
そんな中、教育実習生の身でありながら教え子・千夏を妊娠させた
張本人・花島が水泳部の監督として再び現れた。
花島に反発しつつも水泳指導を受ける修二。
そして背中の痛みを抑えながら修二はインターハイに臨む。


水泳、その信じる道を突き進むこと、そして愛する人を守ること…
水泳を通して描かれる”ほろ苦い”青春ストーリー。
● 感想 ●

 爽やか…なのかな?妊娠中絶とかいじめとかダブリとか色々ディープな要素があって、ちょっとチクッと痛みの伴う青春ですが…
第1回最初の1P目からいきなりHシーンだし、何より驚いたのはその第1話最後ページ。
水面に仰向けで浮かぶ全裸の主人公と必然的に丸見え状態の股間!(…。(-_-;) 
こんなに爽やかな絵柄なのにッなのにこんなロコツにッ!と驚いて慌てて本を閉じた覚えがあります。

テーマは、水泳と恋愛ですね。作者様ご自身がおっしゃるには「恋愛ものは苦手です。」  ……納得。
いやいや、盛田先生は劣等感とか、勝負の駆け引きとかそういう方面での心理描写はとてもお上手
なのですが「恋愛」となると経験がないせいか(本人談)ツメが甘かったりするのです。
千夏が修二を「好きになっていく」過程をもうちょっと丁寧にじっくり描いてほしかったな…
それにしてもクライマックスへの持って行き方はさすがはプロ。これぞ青春って感じで、眩しくていい感じです。
3巻の最後の方になって目の描き方が変わりましたね。それまでは黒く塗り潰すだけだったのが細かく
描き込むようになった。いや、ちょっとしたことなんですが。
● 登場人物 ●

・赤井修二:私立桜花高校水泳部2年生。中学時代不純な動機で始めた水泳だが、隠れた才能が
       あったらしく、その腕を買われて特待生として桜花高に進学。性格は一本気で負けず嫌い。

・若林千夏:修二が水泳を始めるきっかけとなった運命の女性。中学の時教育実習生の子を妊娠、中絶し
       1年遅れで志望校・桜花に入学。
       最初は元彼との再会に戸惑っていたがいつしか修二に心が傾く。素直で可愛い大和撫子。

・藤城風子:修二とは幼なじみで地元の商業高校に通う2年生。中学時代は絵に描いたような不良だが
       実体は純朴で優しく、キスすらしたことがない。
       修二を千夏に獲られまいと積極的に振る舞うが、結局手を引く。修二を純粋に「愛している」。

・花島耕平:大学時代に行った教育実習先で中学生の若林千夏と肉体関係を持ち、妊娠させた張本人。
       高校時代はそれなりの選手だったが引退。大学卒業後、桜花高校水泳部の監督として就任。
       ルックスは良いが、バカ。

・橋本卓:桜花高校水泳部の主将。普通科3年生。その真面目さ故体育科の修二達とは揉めてばかりいるが
      頭も良く後輩思いのいい奴。

・新見錦:天山学園水泳部2年生でバタフライの選手。気さくで紳士でいい奴だが水泳のこととなると
      夢中になり興奮してよく修二をガクガク揺らしていた。

・長谷川明:新見と同じ天山学園水泳部に所属する1年生。ガタイも態度もでかい。
● 印象に残ったシーン ●


<1巻55〜58ページ> 
 修二が退部届を出した後、千夏に選手生命の危機を打ち明けるところ。
 「泳ぎたくても泳げないんだよ 俺はもう水泳選手としてはダメだってよ…」という修二の『絶望』と
 「すごい、すごいよ こんなに速いなんて知らなかった。隠れた才能だね赤井君!オリンピックも
 夢じゃないよね」という過去回想による千夏の『希望』が交差するところがなんとも皮肉で
 いたたまれませんでした。


<2巻58ページ〜>
 風子が修二に裸で迫るところ。女の私としてはこういうアプローチの仕方にちょっと憧れるかも…
 「アタシだって、オンナなんだよ!!」なんつったりして。


<3巻36〜39ページ>
 修二が自分の夢を活き活きとした表情で千夏に語るシーン。「オリンピックでスゲー奴らと泳いで、優勝
 して、金メダル貰って…」と嬉々として語った後「そんで、そばにはお前が居んだ。」というもう一つの
 ささやかな彼の夢を心の中で呟くところが可愛いです。


<3巻117〜121ページ>
 インターハイ予選100M自由形。修二が中学の時、初めて若林千夏を見た時を思い出しながら1位で
 ゴール、そして日本新記録を打ち出したとき。


<3巻141〜142ページ>
 「もっと…もっと速く もっと高いところへ… 誰も、誰も手の届かないところへ!!」
 100M自由形決勝。頂点を目指して泳ぐ修二がかっこいいです。


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